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A Shine of Rainbows 虹の輝き

カナダ・アイルランド映画 (2009)

ジョン・ベル(John Bell)が8才のトマスの役で初主演した映画。同名小説の映画化。子供の持てないエイダン・クイン(Aidan Quinn)とコニー・ニールセン(Connie Nielsen)の夫婦に、孤児院からもらわれていったトマスの話だ。荒涼とした、しかし、虹のきれいな北の島で、常に虹のようにカラフルな装いの優しい養母と、寡黙な漁師でトマスに失望している養父との日常、そして、養母の突然の死によるショックを描いた作品だ。IMGbの評価はかなり高い。2人の名優にはさまれながら、映画初出演で主演にしては、ジョン・ベルは十分に個性を発揮している。

映画の時代設定は1963年。アイルランド本土の孤児院からスタートする。継ぎ当てだらけの制服を着た小さくてひ弱な院生が、鮮やかな服を着た女性に養子候補として引き取られ、小さな島に連れられて行く。その服装と同じように明るい養母と違い、実直な漁師の養父は、おどおどして口もきけないトマスを一目見て落胆する。自分たち夫婦が長年期待しても作れなかった実子の代わりとしては、あまりにも不満足なのだ。トマスは、養母とは打ち解け「ママ」と呼ぶようになるが、養父は「あの人」としか呼べない。養母は、アザラシが、死んだ人間との伝言の仲介をするという地元伝承をトマスに教え、さらに虹の美しさについても語る。こうした、ある意味では幸福なトマスの日常は、養母の急死と、養子縁組に養父がまだ承諾署名をしていないという現実を受け、急激に変化していく。

ジョン・ベルの特徴は、何と言ってもその表情。笑う時も、泣く時も、顔をくしゃくしゃにする。こんなに顔の崩れる子役も珍しい。この表情は少年らしくなっても引き継がれ、ジョン・ベルならではの魅力になっている。


あらすじ

吃りで反応が鈍いため、孤児院でいつも虐められてきたトマス。しかし、心根は優しく、今日も教室の窓ガラスとサンシェードに挟まれてもがいている鳩に気付き逃がしてやる。お陰で、虐めグループに「観察してたんだぞ」「俺のだ。返せ」と因縁をつけられ、「返せないなら、代償を払ってもらう」と鉛筆を折られ、「今度やったら、体罰だ」と脅される。しかし、その直後校長室に呼ばれ、養子に行けると告げられる。迎えに来たのは真っ黄色の服をきた中年の女性モイア。小型船で揺られて着いたのは小さなコリー島(アイルランド北西にある島~実在しない)だった。
  
  

モイアと一緒にバスに乗り、海をみはるかすヒースの高台に到着。犬を連れた精悍な風貌の男アレックが近付いて来る。「ほら、あの人よ。話した通りでしょ」とモイアに教えられるが、人見知りが激しく弱気なトマスは、おどおどしてしまい、「コリー島に よく来たな」と手を差し出されても、口もきけないし、手も出せない。アレックの目は、一目見て、気に入らないと言っている。
  
  

初めて家に入った後も、緊張のあまり全く口がきけない。モイアに対してもそうなので、アレックに対しては、ただ目を伏せるばかり。鶏小屋に案内されて少しリラックスするが、アレックが入ってくると、動転して卵を落としてしまう。夜は、歓迎の意味もあって、アレックの大好物の赤スグリ入りビーフシチュー。しかし、アレックが「もっと、食べたいか?」と訊いても無反応。
  
  

その夜、ベッドに入っていると、夫婦の会話が聞こえてくる。モイア:「失望したんでしょ?」。アレック:「ずばりな」。「ちょっと見ただけで、お見限りなのね」。「男らしい子を選んで来ると期待してたからな。あんなチビを選ぶとは。最初の嵐で吹き飛ばされちまう。もっと頑丈なの、いたんだろ?」。「ええ。でも、私はトマスを選んだ」。ドアを少し開けて悲しそうに聴いているトマス。
  

明くる日、朝起きたトマスは窓から虹を見て大興奮。そのことを言おうとして、ひどい吃りであることが分かってしまう。トマスが外へ出て行った後で、「口もきけない子だなんて、言わなかったぞ」。アレックは呆れ果てている。だからトマスも近寄らない。一緒に舟で漁に行かせようとするが、隠れて出てこない。モイアは、気を楽にしてやろうと、海岸まで一緒に降りていき、アザラシに会わせる。そして、「アザラシは、死者の霊を見つけ、言いたいことを伝えてくれる」と島の伝承を話してくれる。トマスは、おばあちゃんへの伝言をアザラシに託す。その後で、「何て言ったか、知りたい?」。「言いたいなら」。「僕、ここが好き」。トマスが、少し心を開いた瞬間だ。
  
  

ある日、養子縁組協会のおばさんが訪ねてくる。トマスは、そこで始めて、自分は養子になったのではなく、なれるかどうかはこれから決まること、そして必須条件として、受入家庭全員の承諾署名が必要なことを知る(アレックはまだ署名していない)。おばさんが帰った後で、モイアに「署名したくないんだ」と寂しそうに言うトマス。「そうじゃないの。とても 忙しいから」とモイア。「じゃ、僕は住めないんだね。署名しなかったら」。「そんな事で、くよくよしないの」。
  
  

絶望してアザラシに会いに行くトマス。後を追うモイア。トマスは、またおばあちゃんへの伝言を託した。「何て言ったか、知りたい?」。「話していいなら」。「最初、お家で会った時、僕… ほんとのママだと思おうとした」「もし、ママと呼べれば、確信できるのに」。「じゃあ、なぜママと呼ばないの?」。「嫌じゃない?」。「まさか。とっても嬉しいわ」。「僕もだよ… ママ」
  
  

トマスが犬と嬉しそうに遊んでいるのを見ながら夫婦が話し合っている。「私をママと呼んでるの、気づいた?」。「知ってる」。「俺の事は、何て呼んでる?」。「あの人」。「それでいい」。「ほとんど、話しかけないわね」。「やってる。答えてくれんがな」。「態度で示さないと」。「君のようには、あの子を思ってやれん」。
  
  

その夜の食事で、数日後にトマスの誕生日だという話題となる。トマスもいつもより活発にしゃべり、アレックも明日の漁に連れていってやると申し出る。トマスの嬉しそうな顔。翌日、海岸でアザラシの赤ちゃんを見つけるトマス。このまま放置すると飢え死にしてしまう。餌をやろうと申し出て、ずっと面倒見ないといけないぞと言われ、「僕がやる」と言う。「責任 持てるか?」。「持つよ」。小魚の食わせ方を教えてやるアレック。2人の会話もようやく人並みに近付いてきた。
  
  

ママが本土に行って、誕生日プレゼントに釣竿を買ってきてくれた。そして、使い方は「あの人」が教えてくれる。喜び勇んでついていくトマス。しかし、途中で、近所の人に手伝ってくれと頼まれ、「長くはかからん。下で待ってろ」と言って去っていく。通りかかった近所の女の子に「待ってる間、蟹 探そうよ」と誘われても「僕、待ってないと」と断る。長く待たされ、ようやく戻ったと思ったら、「ビール1杯やらないか?」と誘われ、「ボートで待ってろ。すぐ行く」とまた消える。どれだけ待っても来ないので、海岸で待つことに。
  
  

そこに心配したママが来てくれる。夫がビールを飲みに行ったと聞き、体調が良くないのにボートで海に漕ぎ出す(映画では詳しい説明は何もないが、恐らく急性白血病か悪性度の高い癌だと思われる)。そして、トマスに「頭の中で何でも好きなものを描く」やり方を教えてやる。目をつむって、「いいこと、何でも、描けるの」とママ。「何、描いてるの?」とトマス。「まず、黄色が少し」。「それ何?」。「それに、青をちょっぴり」。「何なの?」。「そして、赤も入れる」。「どうなるの?」。そして目を開くと、きれいな虹が見える。「完璧ね」。「とても… きれい」とトマス。「虹の中に入ったら、こんなもんじゃないわ」。「中に入ったこと、あるの?」。「ええ。いつか、見せてあげる」。「約束する?」とトマス。「約束よ」とママ。映画の題名にもなっている重要なシーンだ。
  
  
  

トマスが帰宅すると近所のおばさんがいて、ママが医者に診てもらっていると言われる。「お医者」と驚愕するトマス。呼ばれてママの元に行くと、「病院に行って、少し休養するの」。そして、鏡台から取ってくるように言われた箱の中の真っ赤なハンカチをもらう。「中に、“微笑”を入れておくわね。寂しくないように」と言って、ハンカチを口元につけ、ウフフと笑ってトマスに渡すママ。「大事に持ってる」。「前に教えたように、心の中で、私を描いてね」。「やるよ」。
  

ママが病院に行くと、トマスは近所のおばさんの家に預けられた。病院からは、詳しい連絡は何もない。寂しくなって家に戻った時、ジプシーの物売りお婆さんから、ママを喜ばせようと極彩色のテーブルマットを、おばあちゃんの形見の櫛と交換する。そして、いよいよ病院に行けると分かった時、そのマットを胸に抱いて行く。病院に行くと、ママは力なくベッドに寝ている。それでも、トマスに、「きれいな色がいっぱい。感じられる?」と訊き、トマスが頷くと、「よかった。眠れるわ」と言って目を閉じる。心配でたまらなく「ママ」と何度も呼ぶが、憔悴しきったアレックの「トマス。お行き」の言葉に従う。しかし、廊下で牧師が「我々に、勇気をお与え下さい。モイアを召される時に」と祈るのを聞き、一目散にママの元に。そして「死なないで!」と泣き崩れる(これまで見た泣いた表情で、一番すごい)。アレックの「行け」との言葉に泣きながら従うトマス。
  
  

その日、家に帰ったトマス。夜遅くアレックが戻り、「彼女は逝った」「聞こえたのか?」「彼女は死んだ」とポツリ。立ち尽くすトマス。翌日からアレックは酒びたり。トマスはアザラシと話す毎日だ。ある日、近所の子供たちがやってきて、養子縁組協会の人が島に来てると話す。「モイア死んだの、知ってるぞ」「あの人、署名したのか?」。トマスは「してない… と思う」。「町の方がいいって決めちゃうかも」と言われ、「いやだ。行かない。ここが、僕の家だ」。3人で話し合い、アレックの大好物のシチューを作ることに。アレックが帰宅すると、「大好物、作ったよ」「ママが、教えてくれた」と笑顔で話しかけるが、アレックは席を立って出て行ってしまう。
  
  

ある日、トマスが学校から帰ると、部屋の中が殺風景だ。「ママの持ち物は?」。「片付けた」。「どうして?」。「もう、いなくなったからだ」。夜、外を見ると大きな焚き火が。アレックがママの持ち物すべてを燃やしている。トマスは、泣きながら思ってきたことすべてをぶつけた。「あんたのせいだ! 何もかも! 僕をボートに乗せた! あんたが来なかったからだ! あんたを信じて、僕は待った。待っても待っても来なかった! だから、ママは死んだんだ! あんたが、来なかったから!  大嫌いだ」。
  
  

トマスは帰宅途中、養子縁組協会のおばさんに会い、「すぐ、行きますよ」と言われる。家に帰り、まだ署名がされてない紙を絶望した顔で見るトマス。すぐにアザラシの子に会いに行き、「ママに伝言を届けて」と頼む。そして、「ママ… どうしていいか分からない。お願い、教えて」と願う。すると、辺りが急にカラフルな光で溢れる。トマスは虹の中に入っているのだ。
  
  
  

夜、トマスは、「ママは、約束を守った」「これ、持ってて」「ママがくれた」「中に、“微笑”が」「一緒に いられる」「試して」と言ってハンカチを渡す。ハンカチを抱いて寝るアレック。
  
  

翌朝、トマスは家を離れるべく荷物をまとめ、アザラシの子を母アザラシの群れに戻してやろうとボートで沖合いに乗り出す。しかし、波が荒く、トマスのボートは転覆。トマスはアザラシの群れに助けられ、アレックがボートで助けに来た時も死なず間に合った。トマスはアレックに「ママが、(アザラシを)寄こしてくれた」「僕、知ってるんだ、助けてくれたこと」「ママだよ」と言う。
  
  

2人で家に戻る。アレックは、「カラフルにしないと」と言って、トマスがジプシーから手に入れたマットをテーブルにかける。しかし、トマスはドライに訊く。「僕、いつ出てくの? 明日?」。「“出てく”?」。「まだ、署名してないね」。「当たり前だ」。「じゃ、決まりだ」。「俺は署名する気はない。お前の承諾が、ない限り」。「“承諾”?」。「孤児院に戻りたいか?」。「いやだ」。「なら、行くな」と言ってアレックが署名する。思わずアレックの首に抱きつくトマス。顔は満面の笑みだ。その時、友達が「釣りに行かないか?」と現れる。トマスは、アレックを見て、「まず、尋ねないと… パパに」と言って、にっこりする。
  
  
  

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